当院の診療情報管理室は、大きく分けて「診療記録の物理的管理(診療録の管理)」と「診療記録の情報管理(診療情報の管理)」および「院内システムのシステムアドミニストレータ」という3本柱の業務を担当しております。
診療情報管理室のスタッフは、直接的な医療行為を行うことはありませんし、患者の皆様と直接お顔を合わせることもありませんが、おひとりお一人に敬意を払い、その方の診療に関する大事な機密情報を預かり形とする部署としての自覚を持って各々のスタッフが日々業務を行っております。
当初、診療情報管理室は、新病院移転と共に平成15年11月に診療録管理室として新設され、それまで医事課で行っていた入院カルテ管理を診療録管理室へ移管するとともに、ICD-10コーディングによる疾病分類、統計など各種資料の作成及び、入院カルテの質の向上を目指して業務を行って参りました。
また、平成19年のDPC包括医療制度の導入に伴い、厚生労働省に提出する診療情報データ(様式1)の作成を始め、適切な請求傷病名の選択のため、退院決定時、定期請求時、退院後にいっそう精緻なICD-10コーディング業務の為のカルテチェックを進めております。院外活動として平成20年4月より東京都病院協会による診療情報管理士勉強会に参加しております。診療情報管理の知識を深めると共に、他病院との情報共有を図り、よりよい診療情報の運用を目指していきたいと思います。
一方、各種医療情報システムやコンピュータシステムの日常的な運用・管理・保守に関する一時対応作業を行ったり、保守や開発の業者様と院内要求の橋渡しとしての役割を行うスタッフも診療情報管理室の一員です。電子カルテシステム等院内情報システム化推進に向け、情報管理委員会として行っていたものの組織的な裏づけを得るため、情報管理委員会のメンバーとしてシステムアドミニストレータ業務にあたっていた総務課職員を診療録管理室が吸収することで、平成21年2月に名称を診療情報管理室と改めました。必要な医療情報システムやコンピュータシステムの停止は迅速な治療の停止につながる可能性もあり、また、部門毎に導入していた情報システム同士が患者基本情報データベースを共有することでよりいっそうの効率化が図られるようになっております。システムダウン時間が少なく、効率的な情報ネットワークの構築のための環境構築と整備、エンドユーザーが利用するパソコンの管理やトラブル対応といったシステムアドミニストレータ業務によって急性期医療の一翼を担えるよう努力しております。
診察を受ける際に、多くの方は医師が記載する診療録(カルテ)を目にされたことがあると思います。昨今、電子カルテという言葉が一般の皆様にも浸透してきておりますが、現在当院では、紙に書かれた患者様の病状、治療・看護の経過や今後の治療方針の説明や、様々な検査結果などの出力伝票類を入院診療分、外来診療分、各々別で管理しております。
診療情報管理室では、入院診療の診療録(入院カルテ)を1患者1冊の冊子様に製本し、最終診察日から7年経過するまで大切に保管をしております。当院で治療を受けた方のカルテを処理、管理する部署として「所詮1枚の紙」とは思わず、記録用紙、検査データ、患者様の大切な物を取扱っていると思いをもってカルテを処理しています。特に、当院への入院中に死亡された方のカルテを綴じる際は、その方の最後を看取る様な気持ちで、カルテを綴じています。
尚、外来診療の診療録(外来カルテ)は医事課にて、レントゲンやCT、MRIなどの検査で撮影した画像の出力フィルムは診療放射線課にて最終診察日から5年経過するまで保管されております。また平成20年11月よりレントゲンやCT、MRIなど画像については他部門に先駆けて電子配信および保存を行っております。
診療情報管理室では入院診療録から患者情報や主要な診断名や処置・手術情報等を抽出、ICD-10(国際疾病分類)に基づくICDコーディングを行いデータベース化して、各種検索に対応できるようにしております。蓄積データを集計分析したものを病院運営の資料やより良い診療を行うための指標として、有効に活用できるように加工し提供を始めた段階です。
DPC導入時からは【DPC導入の影響評価に係る調査】の調査項目に関して、診療諸記録から情報収集をし、様式1データ作成を担当。また提出ファイルの作成、提出準備も行っています。診療記録に基づいて傷病名と診療行為の整合性チェックを行い、時に、主治医に確認、相談をしながら病名ICDコードの付与を行うことで、コーディング業務の専門家としてのチェック作業を行っています。また正しいICDコードとDPCコードの不整合など、コーディング業務を行う上で生じる問題についても、院内外で情報収集を行いながらスタッフ間で検討を重ね、医療現場からの声を上げていくよう努力しております。